夜の匂い

疲れて混乱した頭でぐるぐると考え事をしていると、子供の頃に感じた夜の匂いを何故かふと思い出した。比喩としての匂いではなく、まさに夜の空気の香りそのもの。夜に出歩くことが当たり前になった今では、夜の匂いなんて気にも留めなくなったけれど、子供の頃はその匂いを嗅ぐだけでどきどきとしていた。そんなこともあったなと、窓を開けて深呼吸をしてみる。しかし、匂いを感じ取れなくて混乱が深まるだけだった。
「疲れを心の中に入れちゃだめよ、疲れは体を支配するかもしれないけれど、心は自分のものにしておきなさい」
前に読んだ小説にそんなことが書いてあったな。どっちが前か分らなくなるような夜は、心を見失う前におとなしく寝るのがよさそうだ。おやすみなさい。